甲能法律事務所甲能法律事務所
検索
福岡市弁護士甲能ホーム日記インデックス2009.3.2(月):取調の可視化

日記インデックス

2009.3.2(月)

取調の可視化

やや古い情報だが、2月17日、最高検察庁は容疑者の取調の一部を録音・録画したと発表した。昨年4月〜12月の1500件の事件だそうである。5月から始まる裁判員制度に向け、「証拠のビジュアル化」「わかりやすい立証によって裁判員の負担を軽減する」等の基本方針という。そのため、裁判員裁判の対象となる重大事件で、容疑者が自白した事件では全て録画したそうである。不起訴や自白が得られなかった事件を除く事件全てを対象としたが、容疑者の同意した場合でないと録画しなかったという。

刑事裁判では、容疑者段階で自白して、公判に至った被告人段階で自白を翻し、容疑者段階での自白は無理やりさせられたもので任意性(自発性)がないと主張して自白の証拠能力が争われることがある。可視化はその対策の一つ。

しかし、自白に至るまでの全過程を録画するわけではなく、自白した段階で容疑者の同意を得て後から自分のやったことを認める旨述べる場面を録画する、というのが検察庁のスタンスである。この点、取調の全過程を録画すべきだという日弁連と対立している。

 しかし、何を言っても信じてもらえないとあきらめて、取調官の追及通りの供述を始めた段階から録画しても意味はない。真実の供述をあきらめて虚偽の自白を始めたのか、真に反省して自分のやったことを認めたのか、その違いが録画画面からはっきり区別できるだろうか。検察官が容疑者の供述を紙に書いて記録した調書よりは録画画面の方が数段の進歩の様に見えるが、初めての画面で真実の自白か虚偽の自白か、それまでの経過を観ないまま判断するのは困難だろう。日弁連の主張の方が正しいと私は思う。