今年から実施された裁判員裁判について、朝日新聞の12月27日朝刊に九州山口の量刑の様子、28日朝刊に全国の量刑の集計が出ていた。
私が裁判員裁判で最も危惧していたのは、「テレビのワイドショー感覚で判決されて、厳罰化・重罰化傾向が進むのではないか」ということである。この新聞の特集を読む限り、今のところ私の危惧は杞憂のように見える。判決で言い渡された期間が、検察側の求刑に占める割合を計算すると、検察側の求刑の8割以上の量刑が55%、7割以上が78%を占めたとのことで、従前の裁判傾向が求刑の7〜8割だったことからすれば、極端な乖離はないということが出来よう。ただ、求刑の5割以下という事例が5%もあったことからすれば、従前の制度と全く同じという訳ではないので、それなりに「市民感覚」の反映はあるのだろう。
執行猶予事例では、保護観察がつく傾向が目立つようだ。保護観察とは、執行猶予期間中、定期的に保護司という法務省から委嘱された民間人に対し、被告人は定期的に生活状況の報告をしなければならない制度である。生活態度が悪い等一定の条件で執行猶予が取り消されることがあるのが主要な意味で、また保護観察無しの執行猶予中に犯罪を犯しても再度の執行猶予が付けられる場合が例外的に認められているが、保護観察中にはこの例外は認められないので、いずれにしても被告人の更生を見守る制度ということが出来る。実刑判決で被告人を刑務所に入れるか、執行猶予判決で被告人をそのまま社会に返すか、と悩む場合に、社会に返すにしてもこのまま野放しにする訳には行かないという心情が保護観察と結びつくとも言える。
こうしてみると、私の「テレビのワイドショー感覚で量刑されては堪らない」という危惧は今のところ杞憂の様である。それだけ裁判員が裁判に真剣に取り組んで興味本位の安易な態度は全くないということなのだろう。逆に言えば被告人側(弁護側)の真剣度というより的確な訴訟活動があれば、それだけ評価して貰えるということか。心して弁護活動を行なうようにしなければならない。