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福岡市弁護士甲能ホーム日記インデックス2005.12.12(月):ゴルファー嫌い

日記インデックス

2005.12.12(月)

ゴルファー嫌い

「ゴルフはしないんですか」と聞かれて「しません。でも学生時代、ゴルフ・キャディのバイトをしていたことがあります。」と答えると、大抵驚かれる。キャディのバイト自体の珍しさとキャディまでやってて何故ゴルフをしないのかという不思議さと、どちらで驚いているのか(多分、両方だろう)。

大学に入ったばかりの頃、先輩に教えられて初めて行ったバイトがキャディだった。

朝の指定された時間帯に特定のスポットで待っていると、ゴルフ場のマイクロバスが拾って行ってくれる(ゴルフ場の名前は忘れた。京都市の北東部である)。いわゆる立ちんぼである。もう30年前の物価だが、ハーフ毎に確か二千数百円位だったように記憶する。午前にイン午後にアウト或いはその逆という形で、1日行くと五千円位になったと思う。早めに上がると更にもうハーフということも出来て、そのときは七、八千円になる訳だ。昼食は自己負担でカップラーメンを買い、お湯だけもらう。食費も殆どかからず手っ取り早い日銭稼ぎが出来た。だから、その後は金が無くなるとキャディの立ちんぼをしていた。

初めてキャディに行ったときは、ただゴルフバックの荷物持ちだという認識しかなくゴルフ用語も全く知らず、面食らった。プレイヤーが「キャディさん。スプーンちょうだい」と言われたときには腰を抜かしそうになった。ゴルフバックの中のどこに小さな匙があるのか。始まったばかりなのに、こんなところでお茶でもするのかと訝りながらゴルフバッグの小物を入れる部分を探すが、勿論スプーンなんかある訳がない。その後も「ドライバー出して」(えっ、何か修理でも?)「3番アイアンで、いややっぱウッドかな」(鉄?木?)「あ、やってもた。OBやで」(ボールが一体どこを卒業する?)。また攻め方のアドバイスを求められるのも参った。本々ゴルフ場専属のプロのキャディさんがいて、同じ制服を着ている私達学生は補助という形だったが、プレイヤーには区別がつかない。大抵は専属のキャディさんが「ここは右方向にドッグレッグ(?)なので、スライス(?)気味に打って丁度いいですよ。」なんてアドバイスをしているのだが、もちろん私には何のことかわからない。こういうことは熟練が必要な技術の問題ではなく知識の問題で、知りさえすれば良いので直に慣れた。

しかし、慣れるに従って段々ゴルファーという人種が嫌いになってきた。ゴルフは「紳士のスポーツ」なんて言われていたが、キャディーに対する態度が尊大なのである。そして尊大な奴ほど下手で、しかもOBのボールをしつこく捜させたりする。また、どこかの企業の社内コンペなんかで、始球式で上司が煙の出るカラーボールを打ったりするが、それが大して飛ばなくてもオベンチャラで歓声が上ったり拍手が沸いたりすると、当時世間知らずのガキだった私は、青臭く「大人社会は嫌だなぁ」なんて苦々しく見ていた。

バイトキャディーの中にはプロ志望の20歳前後の男の子もいて、彼らは彼らで裏で下手なプレイヤーを見下しているのも何か良い気持ちがしなかった。

何回くらい行ったか思い出せないが、一度だけシングルのパーティーに付いたことがあって、このときは勿論OBなんて無く只コースをまっすぐ歩けば良くて楽だったし、確かにキャディーに対する態度もとても紳士的で感心した。しかし、こういうことは一度だけで、後は尊大なプレイヤーが殆どで段々ムカつくようになって、キャディーには行かず他の種類のバイトに行くようになった。

この頃の経験で、俺は一生ゴルフはしないぞと心に決めた。自分がプレイヤーになるときは別にキャディーさんに偉そうにしなければよいのだろうが、何故か自分は遊んでいるのにキャディーさんには荷物を持たせているという構図が、どうにも性に合わないのである。しかし考えてみれば、居酒屋に行って自分達は酔っ払っているのに店員さんに給仕をして貰っているのとどこが違うのかと言われると反論は出来ないのだが、多分ゴルファー達の尊大さが余程不快だったのと、荷物を持っている者と持たされている者との対照が余りにはっきりしているという印象の問題だろう。

別にゴルフというスポーツに罪はないし、特にプロゴルフではキャディーという職業がプレイヤーに匹敵する大変重要な職業だということは最近ではわかっているが、テレビ中継など見てて、プレイヤーは何も持たないかクラブ一本だけ持ってグリーンを歩き、その後ろをキャディさんがゴルフバックを持って付いていく姿は、どうにもやはり性に合わない。

誘われることも多いので、お付き合いでやった方がいいのかなぁと思うこともあるし、いつか心変わりすることがあるかも知れないが、未だにその頃のトラウマを引き摺ってゴルフをやる気にはなれない。