日記インデックス

作家の丸谷才一さんがお亡くなりになった。

この方の作品では、長編小説「笹まくら」「たった一人の反乱」「女ざかり」を読み、それなりに面白かったが（その後のものは読んでいない）、私の好んだのは寧ろ軽いエッセイだった。軽いとは言っても、膨大で多彩な読書量と読解力にものを言わせて、博引傍証、扱う題材は軽いものでも話は時代と文化を超え、その飛翔力は楽しいものだった。見事な芸域に達していたと思う。

また、日本語論に一家言をお持ちになり、日本語の将来を憂え、その果てに「文章読本」を著された。これは面白い文章読本だった。いわゆるハウツー本ではなく、文章の本質を見据えて色々考えさせられる本で、私は多大の影響を受けたと思う。日本語の文末が「である」という「u」で終わる単調な繰り返しを避けるようにとのアドバイスは、私は比較的忠実に守っている。

文章を、歴史的仮名遣いで一貫されていたのも特徴だが、これはさすがに真似できない。それでも読む分には抵抗はなかった。

熱烈な大洋ファン（今のDeNA）で知られていたが、あの世から一層の奮起を促しておられるに違いない。