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福岡市弁護士甲能ホーム日記インデックス2006.10.6(金):弁護士、東京集中

日記インデックス

2006.10.28(土)

中日落合監督の不明

今年のプロ野球日本シリーズは、パ・リーグの覇者日本ハムがセ・リーグの覇者中日を4勝1敗で下して日本一になった。

目立ちたがり屋の新庄選手が、この日本シリーズを最後に引退する等の話題があったが、私が一言いっておかねば気が済まないのは、中日落合監督のコメントに対してである。

まず三連敗で王手をかけられたとき「余裕こいてたところもあったから、ちょうどいい」というコメントである。指揮官としては余裕を見せなければならない立場なのかも知れないが、後ひとつも負けられないというところに来て、「ちょうどいい」とは何事かと私は思った。2敗のハンデを日ハムに与えてやったくらいで「ちょうど中日と釣り合う」と言っているように思えて、「ほぉ〜、あんたのチームはそんなに強いのかい、日ハムも(パ・リーグも)舐められたもんだねぇ」と思い、はっきりムカついた。ま、そこまではファン心理であると譲歩しても良いが(私はチームとしてはホークスファンだから、オールスターや日本シリーズではパを応援する)、これはファン心理には留まらない感想として述べて良いだろうと思ったのは、シリーズ4連敗で中日が優勝できなかった一昨日のコメントである。

朝日新聞によると「日本ハムというより(日本一から離れている)52年の壁にはね返された。強いものが勝てないのがスポーツ。」ということである。

これは、はっきり言うが実に実にミットモナイ負け惜しみである。スポーツマンらしくないという批判が奇麗事すぎるなら、プロの勝負師としては失格のコメントである。日ハムというチームとファンに対する侮辱であるのみならず、実は中日の選手とファンに対しても侮辱だと私は思う。この程度の指揮官の下で闘ったのだ、この程度の監督を擁するチームをあなた達は応援したのだという意味で。

一勝した後に四連敗である。「強いものが勝てない」という数字ではない。僅差の負けだとうのは言い訳にならない。1点差でも負けは負けである。プロの勝負師は勝つか負けるかのオール・オア・ナッシングの世界に生きているのだから、1対0でも100対101でも価値としては同じである(ホームかアウェーかも同じ−中日は名古屋ドームで連勝できなかった)。同じチーム相手に4連敗、しかも初戦では勝っているダルビッシュ投手が相手の5戦目である。どう客観的に評価しても、少なくともこのシリーズでは中日が「弱かった」、或いは日ハムが「強かった」という評価しかない筈だ。にも関わらず「強いチームが勝てないのがスポーツ」という女々しいコメントは何事か。確か3戦目で負けたときは、ベンチ・ワークが拙かったという趣旨のコメントだったと思うが、そこまでなら「さすが指揮者の責任を自覚しているな」というもので終わっていたのだ。しかし、上述の最終戦のコメントは「それなら中日の52年の壁は厚くて日ハムの44年の壁は薄かったのかい」である。あきれて物が言えない。3年前に日本シリーズに出場したときより壁が厚くなったのか。なら日ハムが日本シリーズに出たのは何年前だったのか。

この欄で以前、我がホークスの斉藤和己投手が「全力を出し切って負けたのだから、相手(日ハム)が上だと認めざるを得ない。(来年は絶対勝ちたい)」というコメントを出したことに触れたが、これ位いさぎよい言葉がどうして吐けないのか私には理解できない。それ位、勝ち負けに執着するのが勝負師だという言い方も出来るだろうが、「敗軍の将、兵を語らず」というのは責任転嫁しないということであって、誰も実態を掴めない「52年の壁」なんてものに責任転嫁してしまうのは、全く潔くない。恥ずかしい限りのコメントである。


2006.10.13(金)

ホークス、またしてもプレー・オフで敗退

ホークスが今年で3度目のパ・リーグのプレーオフ決勝戦で優勝できなかった。悔しい。特に斉藤和己投手は第1ステージでも第2ステージでも最小失点に抑えながら、打線の援護がなく敗退してしまった。私は仕事で決勝試合を見ることは出来なかったが、ニュースで斉藤選手が泣き崩れて仲間の選手に抱きかかえられながらベンチに戻る場面を見て、可愛そうで且つ悔しくてならなかった。しかし、勝負だから仕方がない。本当に「勝負」なのである。斉藤選手の「全力を出して負けたのだから相手が上だと率直に認めざるを得ない」というコメントも潔い。「打線が1点でも取ってくれたら」なんて泣き言を言ったり責任転嫁をしたり一切しない姿は実に清々しい。私自身は、斎藤選手は自分のやるべきことは100%いや120%やったと思っている(だってリーグ4冠王)。シーズン中、斉藤選手は、髪を丸坊主にしたり(これは何年か前)或いは長いときは茶髪か金色に染めたり等するので、何か私は軽い感じの人かとで見ていた部分があったことを告白し、ここで懺悔する。

いずれにせよ、過去2回のプレーオフにはシーズン1位通過のアドバンテージがなく、1位になれなかった今年からは1位チームに1勝のアドバンテージが与えられて、そのハンディを負わされたまま勝ち上がらなければならなかったという巡り合せになる。皮肉という言い方も出来るが、何か言葉は悪いが制度の不備に次々はまってしまう馬鹿正直な人間を連想してしまう。

また野球に詳しい方ならご存知と思うが、ホークスは素晴らしい選手を多数擁しながら、何故かそういう選手に離れて行かれる。例えば今オリックスにいる村松選手は優勝のときのリードオフマンだったと記憶するが大変な好選手で、しかし優勝しながらもホークスを離れた。外様とはいえ優勝の立役者で今ジャイアンツにいる工藤投手も優勝の年にホークスを離れた。後は、松中選手が師と仰ぐ強打者の小久保選手、大リーグに行ってしまった井口選手、そして城島選手、皆ホークスを離れてしまった。これだけのメンバーをそのまま残していたら、そして今の投手陣の陣容をみれば、どれだけ強いチームとなっていたか。それでも馬鹿正直に離れて行く選手を引き留めることが出来ないのである。まぁ当時は親会社が大変だったからで、今はそうではないとは言えるかも知れないが。

とにかく、その様な有力選手に次々去られた歴史に通算3回のプレーオフのホークスの姿を重ねてみると、そして王監督のキャラクターもあって(天才肌の長島さんとの色合いの違いはハッキリしている)、敢えて言えば愚直という表現が似合うのかも知れない。そして、厄介なことに同類の私は当然、限りない共感を覚えてしまうので、今後も益々ホークスを応援することになるだろう。


2006.10.6(金)

弁護士、東京集中

10月5日の朝日新聞夕刊によると、

「弁護士 合格者増やせども… 東京人気は不変 新人1144人中 半数が登録」との見出しのもと、以下の内容を報じている。

「今秋、司法修習を終えて弁護士登録した1144人の半数が東京に集中していることが、日本弁護士連合会(日弁連)のまとめで分かった。一方で山梨、函館、釧路、鳥取の弁護士会への登録はゼロ。身近に相談できる弁護士がいない「司法過疎」を解消しようと、政府は司法試験合格者数を大幅に増やしてきたが、東京一点集中は進む一方で、日弁連は地方で働くよさを知ってもらう計画に初めて取り組む。

 新たに弁護士登録したのは04年の司法試験合格者で、今月、司法研修所を修了した1386人の一部。その他は裁判官、検事の道に進む。

 全国50の地裁所在地別にみると、新人の登録は東京が579人。大阪128人、愛知55人、横浜48人が続く。

 一方、ゼロの4カ所のほか岩手、秋田、徳島、高知には1人、栃木、福井、富山、山形、旭川には2人しか新人は来なかった。

 全国に約2万人の弁護士がいるが、5割弱は東京に集中。司法改革で、政府は司法試験合格者を90年の500人規模から増やし続け、昨年は約1500人が合格した。しかし勤務地を選ぶのは本人の自由。高給と言われる渉外事務所や企業関連の仕事が多い東京の新人登録率は03年以降昨年まで57%、53%、56%で推移し、人気は根強い。

 来年には新司法試験の合格者も加わり、修習修了者の数は今年より約1000人増える見通し。「大都市だけでは就職難は必至」という危機感から、日弁連は各地の弁護士会の情報提供などを通して、地方の弁護士を増やす活動を進める。

 地方の司法の活性化などを目指し、今年6月にできた日弁連弁護士業務総合推進センター副本部長の秋山清人弁護士は「1人でもできるのが弁護士の仕事の魅力だが、最近の若手は大都市・大規模事務所志向が強い。地方で活動するやりがい、生活の充実度を知ってもらえば状況は変わると思う」と話している。」

やれやれ、である。我々の時代は毎年400人前後の新人弁護士増加だったが、今やその3倍である。司法試験合格者1,500人時代で、司法研修所卒業試験で、既報の通り100人落第させても1,400人が卒業し、うち1,100人余りが弁護士になる。そして、多分落第者100人のうち9割が追試で救われ且つ落第者が裁判官や検察官になることはないので、最終的には1,200人が弁護士になるだろう。合格者1,500人でこうだから、最高裁・法務省・日弁連が目指す司法試験合格者数3,000人時代に突入すれば毎年2,700人〜2,800人が弁護士になるだろう(裁判官数・検察官数が倍になることはなく増えた分の殆どが弁護士になる)。現在の弁護士人口が約2万人だから、10年で倍以上になる計算である。

そうなれば、確かに弁護士の偏在はある程度は解消されるだろう。今年も未だ東京集中と言っても、毎年3,000人弁護士が増えれば東京集中は変わらなくても、どうしても地方へ行かざるを得ない層が出て来る。しかし、東京以外でも、大阪・名古屋・横浜の大都市、札幌・仙台・川崎・京都・神戸・広島・北九州・福岡の政令指定都市、そして県庁所在地への集中は続き、その他の業種の人口集中と同じく弁護士も都市偏在になると私は予想する。そして、都市に集中した弁護士間の競争が激化し、食えない弁護士が増加して、酷い状態になるのではないか。今でも東京の弁護士は階層分化が著しいと聞いている。弁護士内部の「格差社会」である。現在の私もそうだが、弁護士イコール高額所得者という予断は通用しなくなる。それ自体は悪くはないが、弁護士法1条の「弁護士は基本的人権を擁護し社会正義を実現することを使命とする」という理想が、食えない現実に直面した弁護士にどこまで通用するかという心配がぬぐえない。

今後の我が身の不安もさることながら、弁護士という職業の変質にも不安を抱いている。