東大名誉教授で最高裁判事だった團藤重光氏が、6月25日、老衰のために98歳で亡くなった。
團藤刑法と言えば、刑法学会の巨峰であり、その刑法教科書「刑法綱要」は一昔前までは司法試験受験生のバイブル的存在だった。私自身は、團藤刑法は高尚過ぎてついていけず、その門下の大塚仁名古屋大学教授の著書を司法試験教科書に使った。ただ、大塚教授の理論体系は、殆ど團藤教授と同じで、どちらかと言えば團藤教科書の解説書といった赴きだった。
司法試験の勉強に行き詰まったとき、團藤教授(その頃はもう東大名誉教授だったかもしれない)の書かれた「法学入門」を読んだこともあったが、その該博な知識と視野の広さ、考察の深さに驚嘆はしつつも、蒙が開かれたという感じは受けなかったが、それは寧ろ私の無能の故だろう。ただ、その本の栞(で良いのかな)にあった座談会で、ご自身の学問体系が三島由紀夫の小説に影響を与えたと広言されていたのには驚いた。
最高裁判事になってからは、学者らしくリベラルな姿勢を貫いておられるのには、さすがと敬意を抱いたものだった。
僕の司法試験受験生時代が、また一つ遠くなった。